For Tracy Hyde / Film Bleu

少なくとも、ここ1〜2年の間、ずっと1ピース足りないパズルを眺めるような気持ちで、僕は過ごし続けていた。


あるバンドのフルアルバムが完成し、この世に出るのを、ただただずっと心待ちにしていたのである。


For Tracy Hyde。


12/2に、ようやく彼らのデビューアルバムがドロップされる。


『Film Bleu』。


1940年から1950年代にかけてアメリカで中心に製作された虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画「フィルム・ノワール (film noir)」の"犯罪"を"青春"に置き換えたかのようなアルバムタイトルが、いきなり心憎い。style councilの「cafe bleu」もなぞっている可能性も否定はできまい。


そもそもが、僕はメインメンバーである菅くん自身がヴォーカルをとっていたときからの彼らのファンであった。


一瞬で心と耳を奪われるようなメロディやギターサウンド、青春期の若者たち特有の焦燥感や切なさ満載の歌詞の完成度はその頃から群を抜いていると思っていたからだ。自分がイベントでDJをする際は、彼らの曲「First Regrets」や「Her Sarah Records Collection」なんかを回していたし、そういえば、彼らのことをを"CORNELIUS"と"electric glass balloon"を引き合いにして語っていたこともあったかな(僕なりの大賛辞!)。


もう20数年以上音楽を聴き続けている40歳を過ぎ数年経ったおじさんが聴いて、これだけワクワクドキドキするぐらいだから、その音楽の煌めきさにこれ以上の説明は不要だろう?


80's後期〜90's前期のUK indieから渋谷系、果てはアニソンまでを総括するかのような、その音楽。ボーカルは菅くんからラブリーサマーちゃんへと変わることにより、ポップさ中毒性の強度が増した。そして現在のEurekaさんはそれらを引き継ぎつつ、ビジュアル面でのビルドアップすら果たしている(prefab sproutのアルバムジャケット感たっぷりなアー写もにくい)。

コーネリアスや電気グルーヴのメンバー、世界クラスでの経歴を持つドラマーやDJたちが一つのバンドを組んだり、かつては紅白出場まで果たし渋谷系からお茶の間の王子様となった小沢健二が新曲中心でツアーを行い、活動が止まっていた90'sのミュージックシーンのレベルを引き上げていたバンドたち(沖野俊太郎やGREAT3やb-flowerなど)が充実した新作を聴かせてくれている今。


その一方で、Ykiki Beatをはじめとして、The Fin.やLUCKY TAPES、Suchmosなど、温故知新的感性と若者たちならではの瑞々しい煌めきさが眩しすぎるニューカマーたち。


ベテランたちと若者たちの音楽が同じように並列して楽しめる2016年。そんな一年を締めくくるのに、For Tracy Hydeのデビューアルバム『Film Bleu』はきっとなによりもふさわしいことだろう。

追記:

まずは先行シングル「Favourite Blue」を聴きながら、来たるべきリリース日を待ち続けることにしよう(こちらはapple musicでも聴けますよ)。

the sound of bricolage

サイト管理人・アケシン(UK/US indie・渋谷系 DJ)。 このブログでは、新しくリリースされる作品や、自分が日々聴いている音楽、過去に自分がDJ時に回した音源などをピックアップしていきます。 紹介するからには、その作品をたくさんの方に実際に耳にしてもらいたいので、apple musicなどでチェックできる作品を中心にチョイスしていきます。

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