ピコ太郎 / PPAP

2016年下半期、個人的に好きであるか否かはお構いなしに、なんどもなんども耳にしたピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン」。


相当な回数あのMVは観たし、他の彼の曲もYoutubeなどで一通りチェックして「ちょっとこれは雑すぎでしょ...」とか思っていた曲もあったりしたので、彼のアルバム『PPAP』に関してはさほど興味がなかったわけですが...。


ちょっとナメてました。このアルバムが、ヘッドフォンで聴いた時に与えてくれる"音楽と、言葉の意味や無意味さ"の暴力性は結構なモンでありました。


歌詞だけでいえば"親父がロミータ・ハシミコフというロシア人の女の人を連れてきた"だけの「ロミータ・ハシミコフ」。曲の途中「だから何?」という箇所でいきなりアンダーワールド「Born slippy」的展開を見せての強引な押しきり方はかなりズルい。


そして、ピコ太郎と同様に今年、音楽と動画を絡めてブレイクしたアーティスト岡崎体育を後ろから襲ってレイプするかのような「☆スイーツまとめて星になれ☆」。


曲タイトルが、実はかなり哲学的な「今いる場所、それはここ」。


"ピコっ"というピコアタックを曲の適所に配置しピコ太郎の脱力ワールドへ誘う「ねえ・・・」。


書いててどんどん説明が雑になってくるので、このあたりでやめておくとして、その手の楽曲にちょっと飽きそうなあたりで複数のバージョンやリミックスの「ペンパイナッポーアッポーペン」を仕込んでいるところが、にくい。ピコ太郎、実にズルい男、である(因みに、個人的には「カナブンブーンデモエビインビン」の方が好み)。


先にかるく触れた岡崎体育の場合、「完成形」はミュージックビデオで、アルバムだけで聴くと「MVの映像」が頭に浮かんできて、どうしても聴いているだけだと物足りなさを感じてしまったわけだけど、そのあたりの課題点をピコ太郎は軽々とクリアしてるところが、したたかだ。繰り返すが、ピコ太郎、実にズルい男、である。いや、プロデューサーの古坂大魔王がズルい男なのか?


岡崎体育の場合、話題となった「あるある」スタイルに落とし込むには、歌詞に関していえば「ボケとツッコミ」の視点を律儀に仕込まねばならず、何気に説明的にならざるをえないわけであるが、そのあたりピコ太郎は「言葉の意味や響き(+ダンス&キャラ)」のみを徹底して追求できることが、失速せず勢いを落とさずに音楽だけで聴けてしまう要因なのだろう。


あと、テクノの第一人者となる前の電気グルーヴ的発想と手法の類似点も意外と見過ごせない気がする。


何はともあれ、1歳7か月の娘が「ピコっ」とか「〜ペンっ」とか「...んンッ!」とか歌いだした時点で、個人的には彼に負けた気でおります。


娘の名前が「キコ」というので、自分自身何気に「キコっ」とか言っちゃってる時点で土下座レベルだと思っております。


芸歴の長いワールドクラスのアーティストは、やはり地味に派手にスゴい。


あ、アッポーミュージックでも聴けますよ。

the sound of bricolage

サイト管理人・アケシン(UK/US indie・渋谷系 DJ)。 このブログでは、新しくリリースされる作品や、自分が日々聴いている音楽、過去に自分がDJ時に回した音源などをピックアップしていきます。 紹介するからには、その作品をたくさんの方に実際に耳にしてもらいたいので、apple musicなどでチェックできる作品を中心にチョイスしていきます。

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